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Challenges For The Future
–Project 01-

#01

テクノロジーを駆使し、
多様化する「食の喜び」に
応えていく。

  • 大西 康之

    大西 康之
    おおにし やすゆき

    マーケティング本部
    戦略研究所
  • x
  • 奥田 晃浩

    奥田 晃浩
    おくだ あきひろ

    マーケティング本部
    戦略研究所
生活者の食の好みは多様化し続けている。
十人十色どころか、一人十色と言ってもいいほどだ。
そんな時代の変化に、三菱食品はどう応えていくべきか。
この壮大なテーマに、情熱を捧げる社員たちがいる。
キーワードはAI。
最新テクノロジーを駆使して、食の未来を切り拓け。
生活者が本当に「おいしい」と感じる
ワインを探し出すのは至難の業。
バラエティ豊かなワインの魅力を、
どうやって生活者に伝えていく?
その答えは、「人工知能(AI)で、
究極の1本を導き出す」。

一般の生活者は、スーパーや百貨店などに豊富に並ぶワインの中から、何を基準に自分に合った1本を選べばいいのだろうか。世界中で日々、新たなワインが生まれ多様化の一途を辿る一方で、産地、品種やワイナリーの違い、その他ラベルなどで得られる情報では、そもそもそれが自分好みかどうかの判断が難しい。嗜好品と呼ばれる食品の中でも、ワインは生活者が購入に際し迷う商品の代表格だ。

「生活者一人ひとりに、本当においしいワインを選んでほしい」。そんな思いを胸に、この難しい課題に取り組む社員たちがいる。マーケティング本部戦略研究所の大西と奥田だ。彼らはこの解決の糸口を、最新テクノロジーであるAIに見出した。

大西 「ワインの消費人口は年々増加していますが、そのうちの90%以上の方が、ワインに対する知識をほぼ持ち合わせていません。つまり、「自分の味覚に合っている」という確信をもって購入しているわけではないのです。どうすれば自分に合ったワインを、間違えずに選んでもらえるのか。これは前々から私たちや小売業にとっての課題でした。」

ワインは甘味や酸味、渋味といった味覚の構成が複雑だ。それらが絡み合った味を人がどう感じるか、これは人それぞれの感性によるものが大きく、「おいしい」と感じるかどうかは一人ひとり違う。

奥田 「小売業もPOP表示などで、できる限りワインの特徴を生活者に伝えようと、試行錯誤を続けています。しかし、短時間の接客の中で、お客様の味覚を把握するのは極めて難しい。とはいえ、ワインは本当に奥の深い商品で、必ずその人にとって究極の味というものが存在するんです。それをAIを活用することで見つけ出すことができたら、ワインをもっともっと楽しめる日常がやってくる。そんな社会を実現したいんです。」

味覚という極めて曖昧な感性をAIによって数値化し、生活者一人ひとりに適した味のワインを提供していこうという、困難極まるプロジェクトがスタートした。「AIソムリエ」プロジェクト。2016年5月のことだった。

奥田 晃浩
ワインのプロフェッショナルたちを
唸らせることができるか。
プロジェクト発足の2か月後に待ち構える
最初の関門。

AIソムリエのロジックはこうだ。まず対象となるワインを複数名で試飲する。甘味、酸味といった複数の観点で評価を行い、さらにその味が自分にとっておいしいと感じるかどうか採点する。その被験者のデータをAIに蓄積することで、対象ワインの味を様々な観点から数値化していく。被験者の数が多ければ多いほど、対象ワインに与えられる数値は正確になる。この数値を基準として、生活者が試飲するワインの評価と照合し、彼らが本当においしいと感じられるワインを導き出す。このAIのプロトタイプが完成したのは、2016年7月。プロジェクト発足からわずか2か月後のことだった。

大西 「プロジェクト発足と同時に、2か月後のダイヤモンドフェア(※)に出展することが決まっていました。フェアには、食品メーカーや小売業のバイヤーなどが来場します。つまりワインに詳しい方たちに最初のお披露目を行わなければいけません。彼らを納得させられるだけのAIにできるかどうか、そこが正念場でした。」

彼ら、味のプロフェッショナルを納得させる仕組みをつくる。スタートから大きな壁に出くわすことになった。苦しい状況の彼らを助けたのは、社内の味のプロフェッショナルたちだった。

奥田 「AIの中にどれだけの被験者データを蓄積できるか。すべてはそこにかかっています。幸い当社は味に関するプロ集団です。当然ワインに詳しい社員もたくさんいます。彼らに被験者になってもらいデータを蓄積していきました。さらにAI開発会社の社員の方々、それにプロのソムリエの方々にも協力を仰ぎ、発表までの2か月の間に、100人近くのデータをAIに蓄積することができたのです。」

2016年7月、ダイヤモンドフェア当日。味のプロフェッショナルたちが集うこの展示会で、AIソムリエのプロトタイプは発表された。試飲を行ったのは約500名。彼らに対し、厳選した50本のワインの中から最適なものを抽出した。試飲した来場者の満足度は、5点満点中、平均4点以上。ワインのプロも納得のプロトタイプが、できあがった瞬間だった。

(※)ダイヤモンドフェア:三菱食品が毎年開催する、パートナー企業向けの展示会。食に関する未来予測など、業界内からの注目度は非常に高い。

私たちの使命は、
少しでも多くの喜びを
生活者に届けること。
AIをきっかけに、
生活者をより深く理解し、
期待に応えていきたい。

7月の展示会の成功により確信を深めたAIソムリエは、加速度的にプロジェクトを拡大していくことになる。まずは百貨店でのトライアルだ。展示会での対象は味のプロたちだった。しかし百貨店では、実際の生活者がAIソムリエを使い、ワイン選びを行うことになる。彼らの評価によってワインの売れ行きが決まる。言わばAIソムリエの重要な試金石となるのだ。プロジェクトメンバーたちもこのトライアルに神経を尖らせた。最初は興味本位だった生活者も、AIの診断を受けたワインを手に取っていく。感触はいい。メンバーたちの表情にもようやく安堵の色が見えてきた。
AIソムリエは、小売店のワイン売り上げに貢献する結果をもたらした。ワインを選ぶ楽しさを生活者が感じ取ってくれたことが、何よりの成果だった。

奥田 「百貨店のワイン売り上げの拡大に貢献できたことが、この上なく嬉しかった。この百貨店の場合、プロのソムリエが接客すると5%の割合でワインが売れていたそうなんです。このAIソムリエを活用した販売により、その割合が20%前後に上昇しました。AIの診断が正確であることはもちろん、生活者が何となく感じていたワインに対する敷居の高さが、ゲーム感覚を採り入れたAIを使うことで、気軽に楽しめるものに変わったようです。ワインという嗜好品の、生活者に対する新しいアプローチの方向性が見えてきたと実感しました。」

もちろんこのプロジェクトは、まだ発展途上の段階にある。既に新たなステージとして、日本酒のAI利き酒師、接客用人型ロボットの開発なども進んでいる。

大西 康之

大西 「ワインという切り口からスタートしたプロジェクトですが、あくまで入口に過ぎません。ワインや日本酒といった嗜好品を抽出するだけでなく、それらに合ったメニュー情報や商品なども提示して、食卓全体をコーディネートしていきたいと考えています。私たちは食を届ける使命を持つ企業として、より深く生活者に関わっていかねばならない。そして生活者に深く関わるには、食だけでは足りないとも思っています。衣食住に“遊”を加えたライフスタイル全般に関わっていくこと。それが生活者の真の理解に繋がると考えています。」

三菱食品は三菱商事グループの“食”の中核を担う位置づけにある。グループ内には“衣”の中核を担う企業もあれば、“住”の中核を担う企業もある。グループの総合力を活かして生活者をより深く理解し、生活者一人ひとりの幸せなライフスタイルの実現に貢献していく。AI活用は、生活者理解の一環としての取り組みでもあるのだ。「生活者の幸せに貢献する」プロジェクトは、まだ始まったばかりだ。

最後に、こんな問いを投げかけてみた。

彼らが描く理想の
“食の未来”とは?

大西 康之・奥田 晃浩
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